串をはずさないで

合理的なことばかりがいいことではないことのたとえです。
あのね、焼き鳥の串をね、はずさないでいただきたいんですよ。
よく会食になったときに、気をきかせてなのか、
焼き鳥の肉をぜーんぶ、串からはずしちゃう人いるでしょう。
あれは困りますね。
どれくらい困るかというと、北方四島が日本に返還されるのが
未来永劫できなくなるぐらい困るんですよ。
いらんことすんなって思いますね。
そういう人にはこのように言って問い詰めたい。
団子を串からはずして食うヤツがいるか?(いるかもしんないな)
串カツを串からはずして食うヤツがいるか?(これはいそうだな)
問い詰めるというのは言い過ぎたのであやまるが、
ちょっと小言を言いたいのですよ。
最近は寿司を、ネタとシャリを分解して食べる輩も出現しているという。
これは魚から骨をはずすレベルではなく、日本文化への冒涜、
寿司文化への挑戦と捉えてよい。頑固者の大将のいる店なら、
刃傷沙汰になりかねないレベルだ。
寿司はネタとシャリの間の〝なれ〟(なじみかげん)をたのしむもの
だといわれているからだ。
寿司と同じで、焼き鳥にも長年の熟練の技を要する。
焼き鳥は「串刺し3年焼き5年」と言われており、鶏肉を串に刺す
だけで3年の修業期間が必要とされている。
あれは簡単にやっているようで、肉の高さを揃えて焼きムラが
できにくくしてあるのである。
そのようにして串に刺してあるモノを、
出てくるなりはずすヤツがあるか!
はずしてしまうと空気に触れる部分が多くなり冷めやすくなり、
肉が固くなり、おいしくなくなるのは明らかだ。
「みんなが食べやすいように」との親切心から出たものだろうが、
そんなのはほっときなさい。
誰か食べられないやつが出てきてもほっときなさい。
焼き鳥が食べられなくても餓死しないから。
ついでに「皮は鳥肌みたいでキモ〜イ」と言っている人も
ほっときなさい。
「人数に対して本数が少ないな」というのを確認しながら、
「ええい、ままよ」と食べるから焼き鳥はうまいのだ。
焼き鳥を食べるときは、串の刺し加減を鑑賞してから
食べるようにしてください。