遅咲き 

遅咲き。
いい言葉だ。
大器晩成。
いい言葉だ。
結果がなかなか出ない人にとって、慰めになる言葉だ。
今年は桜が記録的な遅咲きなのだという。
ぼくは自分が生まれた時期に咲く、この桜と言う植物に
他のものとは違った感慨を持っている。
畏敬の念と言ってもいい。
3年前まで住んでいたところの近くに、寺社の跡地があり、
そこには立派な桜の木があるのだが、いつだったか桜の咲かない季節に
そこで桜の木の絵を描く中年男性を見かけた。
彼が描いていたの木の根っこだった。
無数の桜の花びら一つひとつにいたるまで、土中から栄養を
吸い上げている、その根の力強さが、絵にも見事に表現されていて、
ぼくは思わず見入った。
ぼくが桜に対してもつ畏敬の念は、
そんなところにあるのかもしれない。