立ち食いそばの風景

ぼくはよく立ち食いそばを食べる。「立ち食いそばを食べる」といっても
「立ち食いそば」というメニューがあるわけではなく、ここでは
「立ち食いで食べるそば」を意味する。
英語でいうと、Standing SOBAということになろうかと思う。
ぼくは大学生のころからの立ち食いそばファンだ。
野球の試合の帰りなどで、乗換駅の立ち食いそば屋に、
文字通り「立ち寄った」ものだった。
仕事を始めてからも立ち食いそば生活は続いた。
なかでもお気に入りはチェーン店はチェーン店でも、まだ10店舗ぐらい
しか出店していないようなそば屋がよい。
小諸そば」などは食べ過ぎたせいか、少々食傷ぎみなのだ。
仕事で出先に立ち食いそばを探すことさえある。
女性はあまり行ったことがないと思うが、「立ち食いそば」は
マクドナルドなど比較にならないほど、商品が出てくるのが早い。
注文して15秒以内には出てくる。
食べるのにだいたい3分。しめて3分15秒で食事を終えることができる。
そういうファストフードの魅力も手伝って、「立ち食いそば」ファンは
確実に都内に生息しているようだ。
ネットで「立ち食いそば」と検索すると、「立ち食いそば食べ歩き」
みたいなサイトに多数出くわす。
「立ち食い」なのに、さらに「食べ歩く」のだ。
だいたいどこの店がつゆが濃いだの薄いだの、かき揚げがうまいだの
脂っこいだのと論評をのたまっている。
なんにでも論評をする人がいるので、たまにいやになる。
それはさておき。
「立ち食いそば」でのやりとりは下町調になる。というか、殺伐となる。
「お客さんは何にすんの?」「ちょっとそこ詰めてくれる?」
という店側の対応はもちろん、客のほうも「おにぎりある?」とか、
「天ぷらそばねー」などと、かなりフレンドリーなのだ。
食べ終わったら、「ごっそさん」といって足早に去るというのが通例だ。
「ごちそうさま」でも「ごちそうさん」でもない。「ごっそさん」なのだ。
大きな通りより一本中に入っている店ほど、
客の出入りが激しい店ほど、店側と客側のやり取りは殺伐となる。
慣れていない人はトレーニングが必要なので、このような店には
客が少ない時間帯に行くことをお薦めする。