情婦

うまいなあと思わされる映画はそう何本もない。
この映画、本当にうまい。
今となっては「あざとい」と言われるかもしれない演出だけど、
つくり手はそういう細部にこだわってほしいですね。
ロンドンの老弁護士ウィルフレッド卿にある客が訪れる。
富豪の未亡人殺しの容疑にかけられている発明家ヴォールだ。
彼女の遺産を相続することになっていたため、嫌疑はいっそう
深まるが、彼の妻クリスチーネがアリバイを証明する。
大どんでん返しが有名なこの映画なのですが、うまいと思わせるのは
最後のところで、大どんでん返しを観客に予想させるように
前フリをさせておき、観客が「やっぱり!」と思った瞬間、
観客の予想を超えるさらなるどんでん返しを用意しておいたこと。
伏線の張り方がすばらしい。
なんでもないと思っていた話があとで重要な話だったり、
事件に関係のない人とのやりとりが軽妙だったりで、
とてもたのしめる娯楽作品になっているのでした。
監督はビリー・ワイルダーで、「アパートの鍵貸します
サンセット大通り」「あなただけ今晩は」など
彼の作品はどれもおススメです。