果実は青いうちに

果実は青いうちに収穫しなければなりません。


先日、友人3人と居酒屋で座談会を催した。
この4人が集まるのは久しぶりであった。
話題は各自の恋愛話に終始した。
ひとりは付き合い始めて1か月弱、
ひとりは付き合い始めてもいいのではないかという時期、
ひとりは付き合い始めるにはもうちょっと時間を要する時期であった。
少なくとも私にはそう見えた。
だが、各自がこれからを期待して上機嫌であった。
彼らが有頂天になっているから、異様なテンションで話は進んだ。
私は既婚者という目線で、一段高いところから彼らの恋愛状況を
診断するという役に「あえて」回ることにした。
「おい、それもう告白しちゃえよ」と言いたくなる人もいる。
それでも「いやまだまだ」と彼はいう。
果実が熟すのを待っているのだ。
だが、果実が熟してから収穫しては遅いのだ。
いいですか。
いま日本に入ってきている果実は多くが、海外から来たもので、
それらがまだ青いうちに収穫されている。
日本で収穫されたものも青い段階で収穫される。
バナナでもパイナップルでもそう。
そして流通し、私たちの最寄りのスーパーに届くころには
食べごろになっているはずだ。
だから、現地で熟したものを収穫して、その場で食べたほうが
おいしいに決まっている。長い間、木の上で日差しを浴びていた
もののほうが糖度は高いはずだからだ。
ここに田舎の「豊かさ」があるし、「地産地消」が推進される理由がある。
持って帰って食すのなら、まだ青いうちから収穫しなければならない。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
恋愛も同じ。
多少の危険を冒しても、相手の懐に分け入って
青いうちに収穫しなければならない。
交際が始まってから、二人で熟すのを待てばよい。
でも、みんなは熟すのを待ち、自然に木からボトリと落ちる瞬間に
ナイスキャッチしようとしている。それは難しい。
「我ながらいいこというなあ」と自己陶酔していると、
「うん。うまいこと言ったつもりだろうけど、いまひとつわかんない」
と彼らから言われた。
まあよい。
鉄は赤いうちに、果実は青いうちに。
それはさておき、この日、居酒屋で男たちは大爆発した。
何かが起こる前兆のような気がする。
全員無事ですめばいいのだが……。