責任者は……

村上世彰氏のインサイダー取引事件で、誰が得をし、誰が損をしたのか。
得をしたのはファンドに参加している機関投資家など。
損をしたのは一般投資家だ。
村上ファンドには国内外の年金基金アメリカの大学の財団が
参加している。
今回、初めて知ったのだが、たとえばハーバード大学は2兆円を超す
基金をもっていて、運用している。
運用実績はなんと16%というのだからすごい!
5,6年で倍になる計算だ。
ファンドマネージャは学長より高給を取るという。
なんでこんなビッグサイズになっているかというと、大学に対して
行われる企業からの寄付金が大きいのだという。
それはもう何百億円という金額です。
アメリカでは寄付すると節税になるんですね。
そうやって集めたお金で世界中に運用し、回収してくると
そうことになっているようです。
どうもハーバードの基金村上ファンドに入っていたらしいですね。
しかも何百億円という単位で。
他にもアメリカのどこかの大学基金が潤ったのでしょう。
これでアメリカの大学から企業に何らかのバックがあったら、
脱税まがいに受け取られかねませんね。
大学の基金が温床、隠れ蓑になってはいまいか。
こういうのにアメリカ社会では批判はないんでしょうか。
もちろん、運用実績であげたお金で大学の設備や授業料の面で
学生にプラス面があるとは思いますが。


今回の村上氏の事件やライブドア事件について
一部で彼らを擁護するような発言を聞く。
「日本はチャレンジャーに厳しい」「出る杭は打たれる社会だ」
彼らがチャレンジした結果、確かによくなったと思われる点もある。
それはそれとして評価した上で、じゃあ何が悪かったのかという
点にはあまり目を向けないのは問題だ。
利益至上主義で何がダメなの?
お金を儲けるのは悪いこと?
そういう単純な議論には耳を貸したくない。
「世の中はカネである」
ある意味ではそうですが、ある意味では違う。
世の中はカネで回っているとは言えるけれど、
カネだけで回っているのではないということです。
カネでほとんどのものは買えるが、すべてが買えるわけではない。
カネを儲けることは悪いことではないが、やり方が問題だ。
利益至上主義でいいかもしれないが、ルールに則ってやることだ。
ルールに則らないやり方をズルという。
市場の公平性を保つためにインサイダー取引は禁止されている。
そうしなければ、関係者ばかり儲かってしまう。
「正直者がバカを見ない」とはそういうことだ。


株式と株式会社は何のためにあるのか突き詰めて
考える必要がありそうだ。
会社は株主だけのものでもなければ、社長や社員だけのものでもない。
株主と社長以下、社員たちみんなのものという考え方ができないか。
そう考えれば、株主に多く配当金を出すよりは社員に還元すればいいし、
そうすれば社員はリスクのある株に手を出さなくてすむ。
仕事中に株価を気にしなくてすむから、能率も上がって会社に
とってもいいことではないか。
バブル崩壊前までは企業同士が株を持ち合っていた。
持ち合いを解消したから、企業買収の恐怖に晒されるようになった。
証券取引法が相次いで改正され、個人投資家が増えた。
そして、「物言う株主」が登場した。
「配当出せ」で出たらすぐに売り抜けて知らん顔。
そういうのが許されるはずはない。


もう一度、よく考えなくてはいけないのは、このままで本当に
いいのかということです。
いいかもしれませんし、ダメかもしれません。
どうしたらいいかなんて方法論は私にだって簡単に思いつきません。
こうした社会を続けていき、10年後、20年後に
どうなるかを考えとかないと、不安で子どもを産めません。
新会社法もできたし、どんどんアメリカ型の企業社会になっている。
ちょっと前に、企業や個人の累進課税の税率を下げました。
高額納税者の税率を下げたんです。
そうしないと、優秀な人材が海外に流出するからです。
高率の税に苦しんで人材が空洞化した国がかつてありましたから、
それを教訓にしたのでしょう。
一部の優秀な人が日本を引っ張ることで、全体が繁栄するだろう
というのが今の日本政府の考え方です。
エリートをつくって、引っ張っていこうと。
愚民はついてきたらいいのですと。
バブル時代の官僚みたいな考え方ですが、現実はそうです。
そういう政府を選んだのは私たちです。
そうやってバカにされたままでいいんですか、ということです。
正直者がバカを見る世の中でいいんですか、ということです。
東京地検特捜部も善良な市民がバカをみないようにすると
はっきり言っています。
ともかく、こういう世の中にしたのは私であり、あなたです。
みんなの責任です。
決して人事ではありませんね。
そんなことを考えながら、背筋が寒い思いをした今回の事件でした。