ドカベンの思い出 その2

ドカベンの思い出といえば、前回触れた人情噺とか、
山田太郎の先輩である山岡とかが受験に苦労して、
「俺たちはまだ大変だなんていう年じゃないんだな」
とポロっとこぼしたりする場面ばかりを思い出すのだが、
作者・水島新司の野球マニアぶりを示すシーンが、
ライバル不知火との闘いで見せた、
「第3アウトの置き換え」だろう。
1死満塁の場面で打者がスクイズ
小フライを打ち上げてしまう。
取った投手不知火は、一塁に投げて飛び出した山田は
アウトになり、ダブルプレーが成立してしまう。
ところが、このとき三塁ランナーの岩鬼は、
ダブルプレーが成立する前に本塁を駆け抜けていた。
この場合、得点を防ぐには1塁に送球後、
3塁にボールを転送、「3つ目のアウトは3塁にします」
と、フェアラインをまたぐ前にアピールしなければならない。
これが「第3アウトの置き換え」だ。
これが致命的な1点となって不知火は敗れる。
こんなルールブックの盲点をついたシーンは
水島新司しか描けまい。
これを甲子園というリアルな実践の場でやってのけたのが、
熊本県進学校である済々黌だ。
驚いたことに、済々黌の選手はドカベンを読んで、
普段からその練習をしていたという。
これだけでもドカベンがどんだけすごい漫画か
わかるというものだ。