地方出身者の不安感

高校の同級生の友人が訊いてくる。
「家を買って根を張ったという感じする?」
そんな意味だったと思う。
「仮住まいはなんか定着していない感じがする」
と彼はいうのである。この通りではないが、言いたいのはそういうことだ。
定着してないとはいわないが、このへんのニュアンスは微妙だ。
35歳にもなるとみんななんかしら考えるところあるのね。
賃貸住まいはなんだか心もとないという感覚は、
東京出身の人にはわかるまい。
地方出身者なら少しはわかるのではないか。
家を買って「根を張った」という感じはまだないが、
賃貸住まいは心もとないという感じはずっとあった。
その「心もとない」という感覚は、
「いざとなったら地元に帰れる」ということと表裏一体であって、
地元に帰れる実家がない人は、「心もとない」はないだろう。
もう「その街」で生きていくしかないと腹をくくるしかないからだ。
まあ家を買ったとしても最悪の場合、売ることもできる。
「根を張った」と思えるのは、帰る実家がなくなってからだろう。
彼は、自分を上げていきたいとのことで、ランニングをしたり、
エアロビで体を動かしたり、歴史の本を読むなどして知識を
増やしているのだそうだ。
確かなものを得たいという、不安からくるものだと思う。
「仮住まいが定着してない感じ」も出所は同じだろう。
不安にもそれぞれの表出の仕方があることを知った話だった。