映画『鬼が来た!』の壮絶

鬼が来た! movie

中国の映画ですが、戦時中のことを書いている。
もうこれだけで日本人にとってはツライ映画だとわかるだろう。
(もちろん中国人にとっても間違いなく辛いはず)
盧溝橋事件に端を発する日中戦争から
現在までが日中の関係が悪化した時期であって
倭寇とか元寇のあった時代でも国同士は仲良くやってきた。
ほんのここ70年ぐらいのことである。
中国四〇〇〇年の歴史でいうと、たったの2%にも満たない期間である。
そんなわけで仲良くやっていけないはずがないのである。
そんなことを思うほど、1時間半ぐらいを経過した時点までは
気持ちよく見ていられた。
しかし、そこからかなりツライ内容になってくる。
出演した俳優の壮絶な演技、特に香川照之さんは
本当に鬼気迫るものがあった。
人間の持つ弱さをこれでもかと見せられる。
自分の行動は自分のためか、村や軍隊といった組織のためか、
それとも国のためか。
人は自分が準拠している集団なり組織の行動規範が確立しているほど
言動を取りやすい。周りの人と同じようにしていればいいからだ。
だが、戦時中という価値観の混乱した時代では
人間の本当の生きる力というものが試される。
確固たる自分というものをもっていなければ、
自分がどこに拠って立てばいいかわからず、その場の雰囲気や
一時の感情に身を任せてしまう。
その「確固たる自分」をつくりあげる教育も情報もないから
戦争は悲しいし、やりきれない。流れに翻弄されるしかないのだ。
人一人ひとりは戦争などしたくないし、人など殺したくないのだが、
「何かのため」という理由が入るとき、
簡単に一線を超えられるようになる。
この映画で語られていることは狂気の沙汰かもしれないが、
変にリアリティーを持っている気がしてならない。
実は人々のいさかいや誤解の原因は、
単なる誤訳に過ぎないのかもしれないということを、
コメディー仕立てにしている場面があることも付け加えておきたい。