奇祭・護法祭へゆく

美咲町HPより

ドン、ドン、ドッドッドン
ドン、ドン、ドッドッドン
太鼓の音がだんだん早くなってくる。
ここは岡山県美咲町二上山にある真言宗・両山寺
の境内です。
今回、私の本籍地のある岡山県美咲町に古くから伝わるお祭に
行ってきました。
毎年8月14日に行われる護法祭という祭りで、五穀豊穣、
天下泰平を祈願する、全国的にも奇祭として知られています。
1275年に始まったとされており、この地域には
同じような祭りがいくつかあります。
どこが奇祭かというと、神様を人間の体に憑けさせるからです。
神様はゴーサマと呼ばれ、人間の体を借りて境内を飛び回って
お遊びになります。これが「お遊び」の儀式です(そのまま)。
以前から、この祭が気になってはいたのです。
この地に住む祖母から「烏の神様(ゴーサマ)が人間に憑依する。
ゴーサマに捕まったら、3年以内に死ぬ」と聞かされていたからです。
3年とか、1年とかいろいろ説はあるのですが、よくないことが
起こる説があることは確かなようです。
祖母の話では実際に3年以内に亡くなった方がいるそうです。
地元紙によると「災難に遭う」と表現がやわらかくなっています。
というのはなぜかというと、今回、捕まった人がいたからなのです!
それはともかく、どういう具合に祭が進むかというと、
夜中の11時半ごろに境内の裏山に、僧らと憑かれる人間が向かい、
小さな祠(ほこら)でお清め(?)をします。
もうここで憑かれる方は足元がフラフラしています。
バックには太鼓の音が響きます。
そして、山を下り、本堂に戻って本格的に憑く準備をします。
30分ほどして憑いたと思ったら、ゴーサマが軽い足取りで
出てきました!
小走りで駆けるゴーサマ!
逃げ惑う人々!
何しろ、捕まったら死ぬのです。
何度かお堂を出入りしたあと、境内の奥で「ワーッ」という歓声が。
ちょっとやんちゃな感じの男性が、ゴーサマやお付きの人々に
ひっ捕らえられ、両脇を抱えられて本堂に連れ込まれていきました。
本堂に座らされるやんちゃな人!
それを見に行こうと本堂の階段を急ぎ昇る観衆!
歓声が鳴り響く中、お堂の中から般若心経が聞こえてきます。
やんちゃな感じの人は神妙にしています。
?懲らしめられている?といったふうです。
しばらくの間、捕まった男性は座ってお経を唱えてもらっていました。
そして、最後はゴーサマが本堂にお入りになって
終わりとなりました。
あとでゴーサマが憑いた人間の方は60歳だと知りました。
確かに60歳にしてはかなり足取りが軽かったですね。
帰ろうとしていると、隣で見ていた檀家らしき若者が
「お経を唱えてもらっていたけど、たぶんダメじゃろう……」
とポツリ。
ダメってどういうこと? コワッ!
やっぱり死ぬんでしょうか。
ものすごく厳かで、神秘的な雰囲気は独特のものがありました。
「ゴーサマに捕まったら死ぬ」というのは、
別に死を予言してのことではありません。
「お遊び」を邪魔さえしなければ捕まることはないんです。
ふざけて邪魔した人が捕まるんです。
つまり、そういう言い伝えに挑戦しようとしたり、
宗教をバカにするような人を戒め、改心させようとするのが
「捕まえる」という行為なのだと私は解釈しました。
捕まった人が災難に遭うか、死んだりするかは本当のことは
わかりません。しかし、古くから人々が言い伝えを守り、
700年もの間、受け継いできたものは大切にすべきです。
うちの実家はこの寺の檀家だったらしく、今でもお経をあげに
来ていただいているそうです。
恥ずかしながらそういうのを初めて知りました。
真言宗は般若心経ですから、困ったときは般若心経を唱える
ようにしようかと思っています(本当にするかなオレ)。