お客様は神様か

「お客様は神様です」
三波春夫がいったとされる有名なフレーズだ。
これは三波の舞台を見に行った、芸人のレッツゴー三匹のひとりが
ものまねをすることで流行ったフレーズなのだそうだ。
三波春夫は、実は「お客様は神様です」とは言っていない。
このことについて三波春夫本人も考えるところがあるようで、
彼のオフィシャルサイトにはこうある。


私が舞台に立つとき、敬虔な心で神に手を合わせたときと同様に、
心を昇華しなければ真実の藝は出来ない―――と私は思っている。


お客様を神様だと思って、真摯に芸事に向かうという、
歌手としての心構えを説いたものだった。
もともとは三波春夫がステージで司会の人とのやりとりで、
「お客様のことはどう思う?」「神様だと思います」
という一連のやり取りが人気だったのだという。
三波本人は、前述のような気持から出た言葉だったのだが、
それがいつのまにか、「お客様は神様同様にエライのだ」
という認識が広まってしまった。
最初は商品やサービスを提供する側がもつべき姿勢として
とらえる言葉だったのだが、その後、消費者を保護するさまざまな
法律ができ、お客様は守られるべきエライ存在になってしまった。
これが昨今は「お客様は神様だから、何を言っても許される存在」と
曲解されるようになってしまい、クレームも辞さないようになった。
それを恐れて、商売する側としても最初から忖度して、
クレームを出さない商売をしようとしてきた。
過剰忖度社会はこうやって生まれたんだね。
なんというか、こんな世の中になってしまったんでは、
三波春夫も草葉の陰で戸惑っているに違いないだろう。