名言との縁

歩くということは、
右足と左足を交互に前に出すことである


これは中世の有名な海外の哲学者が言ったことである。
一見当たり前のような言葉だが、
含蓄に富んだ言葉だ。
歩くということは、人生にも通じる。
前に進むには、足を前に出すという物理的な動作が
必要になるということだ。
そして、この動作は最初の「初動」に一番のエネルギーを
費やすのである。
この一歩を踏み出すことができても、次々に一歩を
繰り出していかなければ、前には進まない。
最初の一歩が重いし、休んではいけない。
それが歩くことだと、生きることだと言っているのである




……というようなことを書いてみたが、
この名言はまったくの嘘である。
なるほどと思ってしまった人は、権威に弱い人だ。
「中世の有名な哲学者」と言われると、
すぐに深いことを言っているに違いないと思い込んでしまう。
「んなことは当たり前だ。こいつは何を言っているんだ?!」
という人は、人からの評価があまり気にならず、
誰の助言も素直に聞くことができ、あまりストレスをため込まない
幸福な生活が送れている人ではないかと思う。
人が言っていることが、自分の心に響くかどうかは、
自分が決定しているのであって、名言を吐いた人の氏素性は関係ない。
その言葉と自分との間に何らかの縁があるかないかだ。
縁があれば、誰の言葉だって胸に響く。
当たり前のことだって感動する。
それがたとえ真実を述べたものでなかったとしてもだ。