平常心ではいられない

高校野球が終わると、「今年の夏も終わったな」と思う。
いや、決勝戦すごかった。
中京大中京日本文理の一戦。
9回2死から事務所のテレビで観戦しはじめた。
「ああ、もう2アウトか、1、2点でも返せばカッコつくけどな」
と思った。なにしろその時点で10−4。
いくらなんでも2アウトから6点取れるほど相手は弱くない。
でもここから奇跡的な展開が始まる。
死球と四球を挟んで4連打で5点。10−9となる。
なおも1、3塁。バッターは8番。
ここで一打出れば同点だが・・・
快音を残し、ボールは三塁手のグラブの中へ。
どんな名脚本家でも書けないようなハラハラドキドキの展開だった。
2点差ぐらいになったところで、もう誰もが平常心ではいられなくなった。
野手はファールフライを落球、投手はストライクが入らない。
捕手はど真ん中に構える。
「四球出すぐらいなら打たれろ」ってことでしょう。
「打ってもらえば、正面に飛ぶこともある」って。
実際、その通りになった。
いかに平常心で戦うのが難しいかということだ。
平常心を失わせるものは何なのかな。
球場の雰囲気かな、周囲の応援かな、悲願達成するという思いかな。
たぶん、そういうものが全部いっしょくたになって
普通じゃいられなくなってしまうんだろうな。
今の高校生の野球のレベルは、
ぼくらのころよりはるかに高くなったと思う。
投手が140キロ出すのが普通だし、150キロのボールでも
打者は簡単に打っちゃう。
今の球児たちは練習後にスポーツジムに通って体作りするらしい。
練習もどんどん進化して、昔の記録なんかも堂々と塗り替えていく。
高校野球にみんなが惹かれるのは、そういう努力の跡が
伝わってくるからなんだろうな、と思ったりする夏の日でした。