『リンゴが教えてくれたこと』

前作『奇跡のリンゴ』で感銘を受けたので、新書が出たのを知って
さっそく読んでみました。
はじめの数十ページは前作とほぼ同じ内容なので、
それ以降から読んでみました。
著者の木村秋則さんは自然栽培といって、無農薬農法を徹底して
研究している農家の方です。
リンゴを無農薬でつくるという、誰もが不可能と決め付けて試しも
しなかったことにチャレンジし、艱難辛苦の末に成し遂げます。
それはもう涙なくしては語れないものがあります。
この本では、無農薬農法をさらに詳しく研究していった様子が
書かれてありました。農業に興味がない人はあまりピンと来ない
かもしれませんが、これが毎日自分の口に入る野菜や果物のことだと
思ったら否応なしにひきずり込まれていくことでしょう。


気になったのは有機野菜について書かれて項目のこと。
有機野菜は新JAS法に基づいてつくった野菜が、
スーパーや自然栽培でつくった野菜よりも早く腐るのだといいます。
自然栽培でつくると長い間腐らないというのです。
有機農法有機肥料、つまり堆肥を使うことで農薬を減らして
栽培しようとする方法ですが、この堆肥は完熟の状態で使うべきで、
そうでない場合は、つくられた野菜は早く腐る危険な野菜に
なるのだそうです。
未完熟の堆肥でつくった野菜は硝酸態窒素という物質が多く含まれ、
人体に悪影響があるということのようです。
最近ではこの物質の含有量が減ってきているようで、それは農家の努力
というより、スーパーの注文に農家が応じている格好のようです。


そんなことが書かれていて、興味深かったです。
いまでは木村さんのやり方が全国に広がっているようで
とてもたのもしい思いがしました。
消費者とメディアが食の安全について声を挙げたからです。
やっぱり自然の力を最大限に生かすのが、農業においても
最終的には最も大きい恩恵を人間に与えてくれるのだということを
改めて確認させてもらったという気がします。