父の祈りを

1970年代北アイルランド闘争の中で起こった、
ロンドンのパブ爆破事件においての冤罪事件を扱っている。
実話を元にした作品だという。
北アイルランドイングランドの間では争いが長らくあったことは
知っているが、知識はそこで止まっていて、IRAとか聞いたことは
あっても、実際がどうなっていたかなんてほとんど知らない。
かいつまんでいえば、パブ爆破事件(今でいうテロ行為)の主犯格と
された、北アイルランドの青年とその父親の冤罪がどのように
晴らされていくか、その過程で親子の心情がどのように変化していくか
を描いている。
息子は監獄に入ってからドラッグにはまり、自分を見失っていく。
父親は希望を失わず、弁護士と一緒になって冤罪を立証しようとする。
父親は体を悪くする。そして、息子はあるきっかけを境に、
死が迫る父親と一緒に監獄を出たいと思い始めるのである。
暗い映画だけど、息子の心情はある面では理解できるところがあり、
また、父親の「どうしようもないダメな息子だけど、愛している」という
心情も理解できるので、素直に見ることができた。
ただの冤罪ものでなく、父子の心情変化を加味しているところに
この映画の独自性がある。
ともかく、むちゃくちゃな取り調べによる自供が、時代背景によって
肯定されていく様子は怖いと思った。
社会が「そうだそうだ」ってなったら、みんなわーっと興奮して、
冤罪でも死刑でもなんでもアリになるからね。
今でもそういう雰囲気がないかっていうと、そうでもない気がする。
今の時代にも通じるテーマがある映画だと思います。