米大手証券会社破綻が示すもの

米大手証券会社のリーマン・ブラザーズ証券が破綻した。
米国の低所得者向けローン、いわゆるサブプライムローンによる
赤字が膨らんだためと思われる。
不良債権額は5兆円とも50兆円とも言われ、
評価しだいではそれ以上になるとも言われている。
これまで米国の証券会社は未曾有の好景気だった。
証券会社や投資会社の役員は何百億円という報酬を受け取っていた。
そのひとつにサブプライムローンによる利益があった。
そもそも世界的な金余り現象によって、アメリカの金融業界は
投資先を探していた。そこで考え出されたのが、低所得者向けの
ローンを証券化することだった。
それぐらいしか証券化として開発する余地がなかったからだ。
余った金は証券化されたサブプライムローンへと流れ込んだ。
そして、米国で住宅バブルが起こった。
低所得者たちはみんな住宅を買うようになり、
債券は分散され、投資家の投資目標になった。
アメリカの金融機関たちは低所得者
「いま住宅を買っておけば、将来価値が上がりますよ」と
甘い言葉でささやき、住宅を買わせ、ローンを組ませた。
住宅バブルがはじけると、債券は回収不能不良債権と化し、
リスクを分散していた人たちは軒並みリスクを被ったわけだ。
分散していたから、損害も拡散する。
これが、世界同時株が起こったサブプライムローン問題の背景だった。
住宅バブルがはじけるとどういうことになるかというと、
日本のバブルがはじけたのと同じことになる。
住宅の価値は上がるといって住宅を買わされた低所得者たちは
ローンが払えなくなり、にもかかわらず住宅は安値でしか売れない。
家を失い、残ったのは借金だけとなる。
日本でもバブルが崩壊したときは同じようなことが起こった。
バブル崩壊で膨れ上がった不良債権の処理をもたついた政府の失政で、
97年に金融不安を招き、拓銀や山一が破綻。
影響が出始めた翌年、自殺者が初めて3万人を突破した。
今回、アメリカの金融工学低所得者を食い物にした、
そう批判されてもしかたがないだろう。
そもそも金余りを生んだのは、アメリカがドルを刷りすぎたから。
いまアメリカの財政赤字は単年でも累積でも天文学的な
数字になっている。それを担保しているのは、軍事力だ。
アメリカは軍事力を背景に、マクロ経済を牛耳り、国債を中国や日本に
大量に引き受けてもらうことで、国債の暴落を防いでいる。
日本はアメリカの軍隊に守ってもらっている以上、
アメリカの国債なんか危なくって買いませんよ」とは言えないからだ。
アメリカの金融機関を公的資金で延命させるのも、中国や日本が
アメリカの国債を引き受けているからできるのだ。
こう考えていくと、私たちはまわりまわってサブプライムローン
ここまで大きくさせる一翼を担っていたともいえる。
複雑を極める金融工学を駆使して、広く薄く富を全世界から集め、
ある一部の人たちが富める生活をしている。
そういう生活を夢見た一部の会社の経営者が真似をしようとしている。
いま日本は完全にアメリカの金融業界を追随している。
必死で新しい証券化する対象を探している。
アメリカでも低所得者向けローンの次なるターゲットを探して
いるに違いない。
証券化し、投資し、暴落し、家を失い、借金を背負い…。
いったい日本やアメリカや世界は何がしたいのだろう。
もっと他にやることはないのだろうか。
最近、そう考えてしまうような出来事が多すぎる。
生活が便利になることのほかに、
お金を稼ぐことのほかに、
何かやることはないのだろうか。
もっとほかにやるべきことがあるような気がしてならない。
それが何なのかは、まだわからないのだけれど。