褒め言葉が出てこない……

最近のテレビはなっとらん。
人間の出産にまつわる仰天エピソードをドラマで再現する
という番組を見ていた。
最初のエピソードAを見ていた。すると、
「結末は、CMのあとで」というからCM明けを待っていた。
CMが明けると、「結末は番組の後半で!」といって
違うエピソードBを流し始めた。
コラコラーッ! さっきCMの後と言ったではないか。
で、エピソードBを見ていると、「この結末はCMのあとで」とやる。
CM明けになるとエピソードBの結末をやるのだが、CM前に流れた
「思いも寄らない事態に唖然となった」というようなことを
言っていたのに、結果はごく当然の内容だった。
エピソードBの結末をやったあとに、やっとエピソードAの結末を
流してくれた。エピソードの多重構造になっているのである。
私は怒り心頭に発した。
視聴者にCMを見せようというあさましさいっぱいである。
こういうことだから、私はテレビが嫌いになるし、
意地でもCMを見てやんないぞと思って、CMになるとすぐに
チャンネルを変えるようにしている。
こういうことでイライラが募るから、テレビを見ているとついつい
文句ばかり言っていることに気づく。
「なんだこのしょうもない番組は!」
「なんだこのアイドルの髪型は!」
「なんで明日が雨なんだよ!」
見るものすべてに毒づく。
全盛期のチェッカーズ以上に、「ナイフみたいにとがっては
触るものみな傷つける」ような神経になってくる。
あるとき、はっと気づいて、
「こんなことではいかん。これからは見るもの全部褒めてみよう」と
思い、テレビに映るものをすべて褒めようと試してみた。
「この芸人はおもろい!」
「着てる服がおしゃれや!」
「……」
もうそれから言葉が続かないのである。
毒づく言葉はいくらでも出てくるのに、褒め言葉が出てこない。
褒め慣れていないから、言葉が出てこないのである。
人間はこういうふうにして人格が出来上がっていくものなのかもしれぬ。
そんなことを気づけるだけまだマシということか。