奪われているもの

あるテレビ番組で、タレントの所ジョージが田舎をぶらついていた。
オクラだったか何だったかの選定現場で、キズものが選別されていた。
本当に少しのキズでも出荷する間にだんだん黒ずんでしまうのだという。
「不合格」となったオクラは、どうなるのか。
選定現場のおばちゃんが漬物を奥から出してきた。
キズものは漬物にするらしい。
何気なく見ていたのだが、はっと思った。
日本の消費者は世界一厳しいといわれていて、
ロブスターでも触覚が一本折れているともう買わないのだとか。
世界市場だと別の国が買っていくからいいが、
国内市場だと漬物などの他の加工品になるか、捨てられるかだ。
きれいなものだけを買っていると、ちょっとキズついたものや
いたんだものを漬物にするとか、別の調理法をやってみる
とかいう、頭を奪われてしまっているのではないか。
きれいで新鮮なものばかり食べていると、
食べ方の多様性が失われる。
それは食文化の貧弱さにつながる。
食品の安全を求めるのは当然だけど、ちょっとキズがあるだけで
買わないというのはどう考えても行き過ぎ。
賞味期限、消費期限も日本は厳しすぎるので、廃棄食材が増える。
私たちは、自分の手で冷蔵庫からゴミ箱に葬り去っているのに加え、
新鮮なものしか買わないことで、その裏で行われている何倍もの
食材廃棄の理由をつくっていることになる。
このブログでは何度も言っていることだが、行政や企業のせいじゃない。
私たち一人ひとりの生活によって、現状があることを忘れないでいたい。