枝の箸

今日は長男が通う幼稚園で、卒園生の親を代表して
座談会に出席してきた。
この幼稚園の本をつくったのもあり、父親の意見も
たまには聞きたいということだったのだろう。
他にも4人のお母さんたちが登場して、
在園の子を持つ母親たち(おそらく100人ぐらい?)
の前で話をしてくれた。
その中でもっとも印象に残った話があった。
5人の子をもつ母親の話だ。
娘さんが年少のころ、お弁当にお箸を入れるのを
よく忘れていたそうだ。
その日も園の門の前まで来て「あ、お箸!」と気付いた。
実はその前日も前々日もお箸を忘れていたのでした。
「取りに帰る」と娘さんは言いますが、
取りに帰る時間はありません。
かといって子どもが3日も続けて箸を忘れたと
先生に打ち明けるのも言い出しにくいだろう。
そう考えたお母さんの目に入ってきたのは、
園の前に広がる公園の雑木林。
きれいめな枝を2本拾って娘さんに渡した。
それを見た担任の先生は、「あら、素敵!」
といって、枝の端をナイフで削ってきれいな「箸」を
つくってくれたのでした。
機転を利かせて枝を箸としてもたせたお母さん。
なかなかできることではない。
衛生面を過度に気にする親は多いが、
それよりも子どもの気持ちに寄り添うほうを選んだ。
娘さんも「こんなのやだ」とは言わずに、
素直に枝の箸を受け入れたのもすごい。
さらには、園の先生だ。
きれいに洗って枝の先を削り、衛生面の問題もクリアした。
普通なら「これはやめとこうね」と言って新しい箸を
渡しただろう。
でも、園としてのリスクを背負った上で子どもの気持ちに
寄り添った対応をしたのだから、素晴らしい。
こういう大人が周りにいれば、
子どもは必ずたくましく育っていくはずだ。