映画「あん」

ドリアン助川原作、河瀨直美監督。

わけありでどら焼き店を営む中年男性のところへ、

バイトさせてくれといってくる老婆。

その老婆はどらやきの「あん」をつくる達人だった。

この映画は、この二人とある女子中学生を含む、

3人を中心に展開する。

核心部分はハンセン病である。

なのだが、まったく説教臭くなく、物語は静かに

リアルに進んでいく。

差別というのは様々な形で起こる。

昔は、元患者は石を投げつけられたらしい。

いまはさすがにそんなことはないが、別の形の差別が起きる。

ハンセン病の元患者に対する差別が完全になくなったかというと、

そうとは言い切れないのが現実だと思う。

隔離法が否定されてからまだ二十数年しか経ってないのだから。

劇中の3人はそれぞれの不自由さを抱えている。

この社会に対する不自由さだ。

男性と女子中学生は、自分たちなりの、ささやかな闘いを、

差別に対して試みる。

原作者や監督が、

「差別に対して自分の立場、役割で、自分なりに闘え」

とメッセージを発しているように私は受け取った。

自分は差別しているつもりがない、

無邪気で無知な市民の一人ひとりが

実際は差別に加担しているのだ。

コロナ禍の今も同じ状況がありはしないか。

ぜひおすすめしたい1本です。